資料解説
|
2018文化財ウィーク展示資料解説p.4(18)「八王子(はちおうじ)千人(せんにん)同心(どうしん)組頭(くみがしら)の植田孟縉により編纂された、多磨郡(たまぐん)の地誌です。孟縉は、幕府監修の「新編(しんぺん)武蔵国(むさしのくに)風土記稿(ふどきこう)」の編纂員(へんさんいん)の一人で、風土記稿編纂とは別に、自ら地誌の執筆を計画します。当初は武蔵国全体に及ぶ予定でしたが、「江戸名所圖會(えどめいしょずえ)」(No.19)の編纂が進行していることを知り、すでに着手していた多磨郡の部分のみとし、文政6年(1823)に昌平坂(しょうへいざか)学問所(がくもんしょ)を通して幕府に献上されました。当館所蔵本は第1巻の1冊のみで、孟縉の自筆稿本とされています。昭和62年(1987)に東京都の有形文化財に指定されています。(Guide to Scenic Spots of Musashi Province)This is a chishi (guidebook) of Tama County. It was intended to cover the entire Musashi Province, but upon finding out that "Guide to Famous Spots of Edo" (No.19) was being put together, it was decided to publish only the Tama County guidebook. This is the manuscript written by the author Ueda Mōshin himself.」,『江戸地誌とその周辺』図録解説p.11「多摩の名所図会。間宮士信の跋文によれば、『江戸名所図会』(展示資料24)の編纂を聞いて直ちに本書の編纂をやめたという。当初は書名通り武蔵国の名所図会の編纂を意図していたようである。しかしながら、すでに着手していた多摩郡の部分のみは、文政3年に『武蔵名勝図会』12巻として脱稿し、同6年に昌平黌に献上した。著者は八王子千人同心組頭。幕府監修の『新編武蔵国風土記稿』の編纂員である。出陳本2冊は別系統の写本で、慶友社刊『武蔵名勝図会』の校訂者片山迪夫氏の研究によれば、巻1は著者の自筆稿本とされている。巻5には「武州平井鎰屋」の蔵書印がある。 存2巻(巻1、5) 植田孟縉編 写 大二冊」,『第1回江戸資料展』図録解説p.12「撰者は官撰地誌の新編武蔵風土記稿の一員で、自己の武蔵国地誌を計画した。しかし江戸名所図会の編集が進んでいるのを聞き、初志を変えて多摩郡のみにしたといわれる。別に日光山志等の著がある。首部に郡名・郡界の考証を置き、以下領に分けて絵図を加えながら名所・寺社を考証している。本館所蔵分は第一巻の首部と野方領の一冊であるが、書中多くの張込みや訂正が加えられている。大正14、5年八王子史料刊行会で謄写版に付して売り出されたことがある。」
|