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カテゴリ

/双六

題名

昔ばなし出世双六

ムカシバナシ　シュッセ　スゴロク

作者・画工

一英斎芳艶

一英齋芳艶

版元（出版者）

常盤堂

出版年

万延1年10月

大きさ（cm）

50.0×73.0cm

分類

一般/家庭/童話及童話を絵画化したるもの//

書誌注記

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資料解説

『ぷらたなす』43号「双六にあらわれた桃太郎」　「「昔ばなし出世双六」と題するこの双六は、武者絵で有名な歌川国芳の弟子で、幕末に活躍した歌川芳艶が描いたもの。出版許可の印である改印は、つぶれていてはっきりしない部分もあるが、「申」と「改」の文字が確認でき、万延元年であることがわかる。ところが使用されている色は、やや毒々しい赤色が目立ち、明らかに明治に入っての摺りであることを示している。その上改印の周囲には埋木した跡があり、もともとは万延元年よりも以前に刊行された可能性もある。いずれにせよ版面の痛み具合からみて、かなりの数が摺られたようだ。／　この双六、内容は完全な桃太郎なのに題名は「昔ばなし出世雙六」となっている。鬼を平伏させ、宝を得て故郷に錦を飾る様を出世と見たのである。双六には、大きく分けて「飛び双六」と「廻り双六」という形式がある。この「昔ばなし出世雙六」は廻り双六である。全37マス（桝目）、桃太郎のストーリーを追って展開している。／　3人の子供が桃太郎の絵本を囲み楽しそうに語らう場面から「ふり出し」。「くさかり」「せんたく」は、「おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくに」というおなじみの語りだし、そこへ大きな桃が流れてくる。「ぢゝばゝ」では二人の前に大きな桃が置かれ、次は桃が割れ桃太郎が生まれる「出生」。桃太郎は産湯のたらいを持ち上げ、おじいさんは屏風の上にひっくり返り、おばあさんは腰を抜かしている。独楽やでんでん太鼓で遊ぶ「桃太郎」、次の「絵図」では鬼ヶ島へのルートを調べるためだろうか、絵図に見入っている。この部分には「艶豊画」の文字が見える。艶豊は双六全体の画工である芳艶の門人の一人で、こうした作品の一部を門人に描かせることは一般の錦絵などにも見られ、作画修行の一段階だったようだ。たくましい桃太郎は「ちからだめし」と岩を打ち砕き、おじいさんとおばあさんに「だんご」を作ってもらい、二人に見送られて「門出」する。りりしい姿で「旅だち」した桃太郎に、まず「きじ」が供になり、「日本一」の団子をもらう。続いて「さる」「いぬ」も加わるのだが、犬はどこかの飼い犬だったのだろう赤い首輪をしている。「大将」「とを見」とすっかり装備を整えた一行は、船の帆をあげ「出ふね」するが、「沖中」では大波にもまれ難渋する。この盛りあがった大波は、芳艶の師匠国芳の得意とした波の描写を彷彿とさせる。「此ところへ参り候御方はなん風にて一と廻りやすみ」の詞書があるから、鬼が島はどこか南海の島だと認識されていたのだろう。ともかくも岩場に「舟着」した一行は、「山みち」を登っていく。そこには「関所」があり、犬が上書を鬼の「役人」に差し出している。これでは許可を得て鬼の棲家に至ったようで少々おかしく思われるが、敵を欺いてその棲家に入る源頼光の大江山鬼退治の影響が感じられる。「入口」「嶺山」と進み、片手で「石門」の大扉を破る桃太郎のスタイルは、朝比奈の門破りの形に擬している。「うち入」る犬、「勇戦」する桃太郎。「此所にて一ツをふれば上り」というわけで一気に上がることができる。猿雉も「手がら」「はたらき」を見せ、「勝どき」をあげる一行に、鬼たちは「降参」する。「行れつ」を作っての「帰り道」、鬼たちに様々な「たから物」を「けん上」させ、大将風の立派な桃太郎と後ろに控える三匹の前には山なす宝物があり、おじいさんとおばあさんは大喜びで「上り」となる。／　かなり細分化しているため、一つの場面を分割するなど工夫して描いているが、鬼が島へ着いてからの行程にややもたついた感があるようだ。／　「出生」の場面で桃太郎が産湯のたらいを持ち上げその怪力ぶりを見せているが、このパターンは豆本の『桃太郎宝蔵入』（天保4・5年頃刊）や、『桃太郎一代記』にも見られる。桃太郎や弁慶を始めとする特異な生まれ方をする子は幼時から特別な力を発揮する。それは岩や大木、大きな動物を持ち上げるといった形で表現されることが多いのだが、出生間もなく身近なたらいを持ち上げる形は印象的である。」

文庫名

東京誌料

請求記号

087-S13/東S087-S013

資料コード

4300409541

製作者

東京都立図書館

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